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「 アメリカ本土を爆撃した男 」のレヴュー [本のレヴュー]

先日、産経新聞の本の広告欄に、「 アメリカ本土を爆撃した男 」が出ていて、四年前にAmazon内で
この本のレヴューを書いていたことを思い出した。


「アメリカ本土を爆撃した男」になぜ大統領(時のレーガン氏)は感謝状を贈ったのか?
フジテレビ系で放送、大反響! (8/9 奇跡体験!アンビリーバボー)

という見出し付きであった。今回新書版となった広告だった。以下が4年前のレヴューである。



この本を手に取るきっかけは、書名にある「アメリカ本土を爆撃した」という事実が本当にあったのか、という驚きや疑問でした。
その男、藤田信雄中尉は、軍司令部の命によりアメリカ本土のオレゴン州に爆弾を落とし、生還も果たしていたという事実、当時、日本だけが潜水艦に艦載機を搭載していたということ、潜水艦の艦長の命令に従い、一度ならずも二度も作戦を遂行できたという強運にも恵まれたことなど、その他にも戦時中の事実や資料に触れる機会のなかった者には新しい発見が色々とありました。

戦争の時代に生まれていなかったら、大分の農村から出て行くこともなかったかもしれぬ人生が、海軍のエースパイロットとしてアメリカ本土爆撃を任されることになり、戦後は、藤田氏自身が誰にも敢えて明かさなかった『あの恩』に報いたいという熱意、行動を人生の大きな柱にされていたことがよく伝わってきます。終戦直後からの、まずは食べて行くために金物の行商から始め、30余年で会社を大きく成長させたと思いきや予期せぬ倒産を味わい、70才近くで、異業種で低収入でありつつ、再びコツコツと働き始める姿勢には頭の下がる思いがしました。その波乱万丈の人生においても、藤田氏には愚痴を言わない潔い生き方が感じられ、この姿勢は、あの零戦パイロットとして戦後も真摯に生き抜いた坂井三郎氏の凛とした生き方とダブって見え、この方達の気質は戦前の日本人特有のものだろうかと考えさえしました。

それにしても、まだ戦争の影響や記憶が生々しい昭和37年に、爆撃した敵国から藤田氏の身元照会が来た時の日本政府の対応には失望しました。それは時の大平官房長官から直接藤田氏が受けた言葉でしたが、藤田氏の渡米やアメリカによる処遇には「日本政府は一切関知しない」という姿勢です。戦争中、国家のために命を賭けた行為や人に対し、国家が楯になることは第1条件であるべきだと私は強く思います。これに対し、腹のすわった藤田氏は、出撃機にいつもしのばせていた日本刀を持って渡米する覚悟をしたのです。

坂井氏の時もそうでしたが、藤田氏も戦後の単純な反軍国主義の被害者と言えます。軍人や国家に対する奉仕に対する日米間の取り扱いの大きな違いは、日本本土への初めて空襲(民間人もターゲットにした!)を指揮したドーリットル中佐はすぐに将軍に昇格したという事実がよく物語っています。

最後に、この本の構成は時系列ではなく、過去と現在の入れ替わりが多く、その点になれないと読みづらい。私が思うに、著者はアメリカの映画監督、イラナ女史のドキュメンタリー構想もあり、それを意識されてこういう構成にされたのだろうか? いささか映画の脚本のような印象を受けましたが、著者がこの本を書き上げられたことには敬意を表します。


藤田信雄元中尉のような、筋の通った律儀な日本人の戦争体験とその後の人生をまた改めて思い出し、感慨深いものがあった。
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