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山極寿一著「野生のゴリラと再会する」を読んで [本のレヴュー]

昔、とても仲良く遊んでいた小学5,6年生の男の子に26年ぶりに会いに行くと言ったら、誰しも懐かしさがこみ上げてくると思う。その子がルワンダの山奥に住む野生のゴリラだとしたら、特別な感慨が湧いてくるはずです。

ゴリラ研究者、山極氏は当のタイタスは絶対に自分のことを覚えていると確信していたものの、26年間の世情やゴリラを取り巻く環境の移り変わりがあり小さな不安があった。タイタスたちの群れを調査していたころは、1日中朝から晩までゴリラのそばにいられたのに、1回につき1時間だけ、常に7m以上離れているという厳しい制約を受けて山に入っていった。すると、すぐに20m先のタイタスを見つけてしまう。

最初のころ、一人でアフリカの見知らぬ森を歩いているととても緊張していたが、ゴリラの後を追って生態も分かってくると次第に一人でいる不安がなくなっていく様子に、ジャングルの近くさえ言ったことのない私でも同じ体験を想像して新鮮な共感を覚えた。

一人しかいない人間の山極氏がゴリラ同士の「あいさつの声」を覚えたばかりでなく、ゴリラのようにふるまい、ゴリラのような声を出すまでになり、すっかり彼らを信頼し、彼らも温かく受け入れてくれたと感じたことに驚きました。ここまで実感できた体験を「ゴリラの国に留学してきた」と表現されていることから霊長類学者としての謙虚な姿勢を感じます。


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そもそも、この本を手に取ってみたのは、氏の学問のための調査のやりかた、アプローチの仕方に興味があったからです。タイタスのいる【グループ4】の群れの一頭ごとの観察を読むとまるで人間のように個性を持った生き物として感じられ、今まで何となく恐ろしげで得体のしれなかったゴリラという動物にほのぼのとした親近感が持てました。中でも、【タイタスと二人だけの二時間】は、貴重で稀有な体験談でここで触れるのは勿体ない位の話です。


親密な稀有な2時間を共有したこともある子供だったタイタスが、今や人間でいえば60才を超え寿命も尽きようとしていたころ、氏と再会し昔のことを思い出したことを全身で表して証明してくれた場面は感動的です。そのことが本の最後の一文の「わたしは、人間以外の世界にも生きていたのである。」によく凝縮されています。


この本は最初から子供も視野に置き公文出版から出されているため、ゴリラの生態、行動が分かりやすく解説されたゴリラ学の入門書とも言え、意外な知識も得られました。


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