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塩野七生氏、息子アントニオ・シモーネ氏と映画を語る [本のレヴュー]

塩野七生氏は昔から好きな作家の一人です。今回、ネット検索中にこの本の存在を知り早速読んでみました。

「書物と映画は同格」という考えを持つ歴史作家の塩野七生氏と、その教育を与えられた映画製作の現場に携わる息子アントニオ・シモーネ氏の対話形式による映画評論と成っています。前書きにあるように、二人の会話を録音したものをシモーネ氏が英語の原稿に起こし、シモーネ氏の発言の所々を修正しつつ塩野氏が日本語訳をつけるという手法を選んだらしい。そのせいか、語り口、切り口に塩野氏のいつもの文のスタイルが感じられます。

塩野氏の長年の映画への愛着は歴史を眺めるが如く客観性に満ち、片やシモーネ氏は、映画業界の専門的知識や裏表の情報に精通しつつ、同時に、想像される年齢の若者としては驚く程人間やこの世界を観る目が深い洞察力を持ち備えています。


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塩野氏の提起する映画やテーマに従って会話は進み、二人のコメントはオタクっぽい会話ではなく、この世界に生きた、生きている人間そのもの、思想、政治や経済に至るまで深くえぐって目の前にさらしてくれます。まさに映画とは、この世を映す鏡で、映像や音声を伴う書物と言えるでしょう。この二人が親子関係にあるという予備知識が無ければ、成熟した映画評論家の知的な上質の会話を聞いているようです。

60作以上にのぼる、イタリア、アメリカ、ドイツ、そして日本の映画を取り上げていますが、映画へのアプローチや解釈が刺激的で、この本は改めて映画の醍醐味、奥深さを教えてくれています。それと共に、お二人の関係が、お互いを認め合った意識の高さと知的内容を共有できる親子関係にあることが、新鮮な驚きであり、羨ましくも思えました。塩野氏は、数多の歴史物語、息の長い長編を書きつつ、人間や事象を観る眼の確かな成熟した男性を産み育てたのですから、本当に恐れ入りました。


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